医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・1
ヨーロツパ各国の医科学生に対する衛生学公衆衛生学教育
西川 滇八
1
,
前田 和甫
1
1東京大学医学部公衆衛生学教室
pp.325-331
発行日 1959年5月15日
Published Date 1959/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202142
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医科大学の医科学生に対する衛生学及び公衆衛生学の教育は,その国の衛生状態,医療の状態,保健制度の状況が反映されるのが一般のようである。たとえば,基本的な公衆衛生上の問題に関する法制が完備し,衛生工学や衛生試験検査等の専門家が養成されている国では,医学生に具体的な衛生技術は教えなくともよい筈であり,一方,かかる面の発達が遅れている国では,具体的な衛生技術をも医学生の重要な課目としてとりあげなければならないであろう。ここには,ヨーロツパにおける医学教育課程の中の衛生学,公衆衛生学のカリキユラムを紹介して,わが国のそれと対比する資料としてまとめてみた。ヨーロツパ各国(主として西ヨーロツパ)の衛生状態は決して一様ではなく,国によつて著しい距りがある。第1表は18力国の衛生統計を較べたものだが,国別の差が大きいことはこれだけの基礎的な数値だけからも十分察知される。従つてヨーロツパ地域と一括しても,国により公衆衛生面で重視しなければならない問題に大きなちがいがあり,大部分が将来一般医となる医学生の教科内容にも差異が生ずるはずである。
ヨーロツパ各国の医学生の教育は5年乃至7年であるが多くは6年間で,卒業後,独立の医師として医業に従事する前に,大学,大病院等でさらに研修を積むのが普通のコースのようである。たとえば英国やノールウエイでは,卒業後一定期間の修練が規定されていてその間に公衆衛生の実地訓練が課されている。
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