「医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育」についてのアンケート
西川滇八,前田和甫氏の「ヨーロッパ各国の医科学生に対する衛生学公衆衛生学教育」に関連した討議
外山 敏夫
1
,
勝沼 晴雄
2
1慶応大学衛生学・公衆衛生学教室
2東大公衆衛生学教室
pp.621-622
発行日 1959年10月15日
Published Date 1959/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202196
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ヨーロッパ各国に於ける衛生学,公衆衛生学の教育は両氏の記事の如く,環境衛生に主力をおくものから,予防医学ないし社会医学に重きを置くものまで各様であるが,それは国の衛生水準と必ずしも一致しない事は確かで,むしろ教育内容はその大学所在の地域に関連したエコロジカルな特性によるか,又単なる伝統に左右されている場合もある。ユーゴースラビアの如く,ヨーロッパの中では衛生統計からみて水準の低い国でも,社会医学と環境衛生とにほぼ同じ位の力をそそいでいる場合もある。この国の医学教育を左右する大きな因子の1つは,戦後の医師不足を補充することであつた。戦争中に約4,000人の医師が失われ,ほぼ同数が生き残つたのみで,(そのうち半数は50歳以上)これが人口1,600万人の医療を担当していた。同時にこの国の主要衛生問題は発疹チフス,マラリア,結核,梅毒等であつたから,環境衛生の教育に於ける比重は大ならざるを得ない。一方故Stamper博士の如き熱情的公衆衛生先覚者によつて近代的な社会及び予防医学への前進も急速に併行しているため,教育内容も刻々と近代化されている。
又英国では従来の小間物の集まりの如き公衆衛生教育を排して,理論的に首尾一貫したものを社会医学の名のもとに打立てる努力がなされた。
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