原著
宮入貝(日本住血吸虫中間宿主)の生物学的研究—I.宮入貝棲息地の地質及気象
菊池 滋
1
1横浜医科大学寄生虫病学教室
pp.211-214
発行日 1958年4月15日
Published Date 1958/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201954
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I.緒言
日本住血吸虫病の予防撲滅に関しては年々膨大の財源を費しその撲滅を図つているが,尚依然として罹病者多数の発生を見ている実状である。果して有病地が楽土となり安住の地を得るの日はいつであろうか。現在の撲滅方針は単に予防措置を講じ流行を抑制すると云う緩慢な態度で根本的撲滅方策は樹立されておらない。他の有病地に比し山梨県はその面積が最も広大であり,単なる一時的な湖塗策では永遠に撲滅は達成し得られない。かつての有病地に患者の発生がないからと云つて決して貝が絶滅し終息したものとはいえない。万一少しでも予防措置に緩みが出るなれば忽ち再燃の兆をなし,或は元の有様になることは既に歴史の示すところである。従来撲滅事業の芳々しく進歩しなかつた一因として本病の研究が学術的研究のみに興味を持ち予防撲滅の実際方面に就ては深く追求されず,殆ど学問の外と云うふうに扱われて来た感がある。ここに抜本的な予防撲滅方策が広く研究され,実施されねば本病の根絶を計ることは至難の業である。本病撲滅の途は虫卵撒布の中絶と罹患者の完全な治療及中間宿生撲滅とにあり,この中いずれか一つが完全に遂行されればこれによつて起る新なる病気の発生は全くなくなるであろうが,このことは中々容易ではない。従つて撲滅をなす上に只一つを固執することは適当でなく,他方面に於てもこれと相平行して撲滅事業を推進して芟除につとめねばならないことは勿論である。
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