原著
宮入貝(日本住血吸虫中間宿主)の生物学的研究—Ⅲ.自然界に於ける宮入貝の生態観察
菊池 滋
1
1横浜医科大学寄生虫病学教室
pp.329-335
発行日 1958年6月15日
Published Date 1958/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201976
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緒論
日本住血吸虫の中間宿主である宮入貝の日本に於ける棲息地域は一定の範囲に限局されているがこれは宮入貝の生活環境に対し種々複雑な要因があり,簡単にきめるわけにはゆかないが,とりわけ地形,地相,土壌,気象との関係が大いに影響を及ぼすものであることをさきに報告した。然しながらこの外の要因としての貝の習性もこれと大きな関聯を有しているので棲息地に於ける宮入貝の自然の状態,即ち貝の生態を深く見きわめることが最も大切である。貝の生態に関しては宮入,鈴木(1913),小林(1916)1),Cort(1919)2),杉浦(1931)4),Mao(1948)12),岡部(1938)4),Ingalls(1949)13),Hsü(1950)14),Hunter(1950)21),McMullen(1951)15),Izumi(1951)16)川本(1954)20),岡本(1954)19),津田(1952)18)等の報告があるが,いずれも自然界に於ての詳細な観察記載は少ない。著者は山梨県に於て自然界の宮入貝の生態を長年観察し,更に環境の変化についても観察したのでここに取りまとめて報告し,従来の諸業績に対する知識の増補をなさんとするものである。
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