原著
宮入貝(日本住血吸虫中間宿主)の生物学的研究—II.宮入貝棲息地及非棲息地の土壌形態と分析
菊池 滋
1
1横浜医科大学寄生虫病学教室
pp.215-222
発行日 1958年4月15日
Published Date 1958/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201955
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I.緒論
著者はさきに山梨県に於ける宮入貝の棲息地質は標高200〜400mの冲積層400〜600mの洪積層に大体限局して棲息し,これに接する地質は第三紀層,御坂層,輝石安山岩,花崗岩,石英閃緑岩その他の地質で標高800〜1,200m以上に及んでいる。この地域には貝の棲息は極めて少ないか又は見られないことを報告したが果してこの地質以外の地域には棲息することは不可能であるかどうか,或いは何故に棲息地域に限局して容易に拡大せぬだろうかの問題を明らかにすることは極めて重要なことである。宮入貝の棲息地域が一定の範囲に限局されていることからして宮入貝の棲息条件にも種々の要因があると思われるので簡単に判定するわけにはゆかない。とりわけ土壌と気象との関係が大いに影響を及ぼすものと考えられる。由来これ等の問題についての研究報告は極めて少なく,加藤(1940)は山梨県に於ける宮入貝棲息地帯の地質は冲積層及び洪積層に限られるとし,また広島県の棲息地の或る地域についてその地質が花崗岩,秩父古生層及びLoam層であるところには棲息は認められないと述べている。津田(1952)は山梨県産宮入貝は東京都内,神奈川県埼玉県の土でも充分飼育し産卵及び稚貝の成長も棲息地となんら変化がない。
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