原著
生活時間分析より見た農業労働改善の目標
大石 省三
1
,
山田 淳
1
1山口医大衛生教室
pp.55-57
発行日 1957年8月15日
Published Date 1957/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201868
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緒言
我が国農業が零細規模家族裸手労働を基盤とするため,兼業化傾向と共に労働過重化の矛盾した2傾向が同時に進行し,特に農繁期に莫大な時間と労力を消費しその弊害の大きいことは広く認められている。近年農家生活改善の機運が旺であるが,要は農業労働慣行乃至技術の改良を第1とし,食住衣その他の消費生活の改善合理化を補助として経済的時間的肉体的余裕を生み出し,生活と文化の向上を指向するにあるべきであつて,根本方針を見失つた補助改善事項のみが前景に出る場合農民は錯覚に陥り易く,高橋1)が農村結核の根本を把握して住宅乃至栄養至上主義者となる誤りを犯してはならないと述べて居る点は注意すべきであり,まして多額の経費を要する改善事項の如き結果的に労働強化へ拍車をかけるならば功罪相半ばする以下となり,又生産増強結構であるが,農繁期負荷のピークを切り崩さずして農閑期の谷埋めを行うなら生産の背景に人間を見失う危険を加重する。要は農民生活の大部分を占める農業労働の苦痛解放の大眼目の指向を常に怠らぬことであり,その具体的方法はその路の専門家の創意工夫に待つが,此の意味より農民の生活時間現状の分析より農業労働の一応の限界を考察する事は生活改善指針上の緊要事と考える。
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