原著
放射性同位元素P32を用いたコガタアカイエカの飛翔距離測定実験
北岡 正見
1
,
徐慶 一郎
1
,
緒方 隆幸
1
,
児玉 威
2
,
原田 文雄
2
,
石井 襄二
2
,
時任 直人
3
,
田中 徹
3
,
杉山 貞一
3
,
小林 和夫
4
1国立予防衛生研究所
2神奈川県衛生研究所
3横浜市衛生局
4横浜市神奈川保健所
pp.109-115
発行日 1956年11月15日
Published Date 1956/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201766
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まえがき
日本脳炎が蚊によつて伝播されることは今更申すまでもない。本病の予防対策を感染径路,特に蚊について論ずるには,今日媒介者であることの確証の挙げられているコガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)の飛翔距離を知ることが重要なことであるにも不拘,未だに測定されていない。そもそも蚊の飛翔距離を測定するのに色々の方法が報告されているが,種々の色素で着色した成虫を放つてその地点とその蚊を再び採集した地点との距離を測る方法(Zetek 1913)1,2)が古くから用いられていた。それにはオレンヂG,エオジン,フクシン,ゲンチアナヴイオレット,メチレンブルー等の色素が用いられたが,ある色素は或種の蚊に有害であつたり,染色中に蚊が活性を失つたり,更に着色の持続性が不十分であつたりして,種々の困難が伴つていた。近年に至り,Hassett & Jenkin等(1949)3)が放射性同位元素を使用し,蚊体に何等悪影響を与えることなく放射能帯荷の成虫蚊を作ることに成功してから,放射性同位元素で標示された蚊で野外の飛翔距離を測定する実験が行われるようになつたJenkin等(1950)4),Thurman等(1950)5),Quarterman等(1955)6),更に蚊のみならず蠅Lindguist(1951)7),ダニその他の昆虫8)にもこの方法が応用され興味ある結果が報告されている。
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