原著
原水爆影響調査船俊鶻丸の調査結果について
浦久保 五郎
1
1国立衛生試験所
pp.80-87
発行日 1956年11月15日
Published Date 1956/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201758
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南太平洋における米国の原水爆実験は本年にも計画され,5月5日に最初の一発が実施されたのを皮切りに次々と推定10回行われ去る7月下旬遂に終止が報ぜられた。一昨年の第五福龍丸の事件以来我国民の得た前代未聞の経験や心配が結集して本年もまた南洋調査船が計画され,一昨年使われたと同じ俊鶻丸がまた21名の若い科学者を乗せて出航し約40日間にわたる調査を終えて帰つて来た。筆者も再びこの調査団に加わり一昨年とは異つた新しい見聞をもつて今さらのように原水爆の脅威を感じたのであるが,以下にその興味ある部分を味簡単に紹介したいと思う。ここであらかじめ断つておきたいのは本年の実験はマーシヤル群島のビキニおよびエニウエトツク環礁で行われたが,最初の1回目が5月5日,2回目が21日といづれも公表され,俊鶻丸の出航は26日であつたので調査航海中いつ3回目の実験が実施されるかわからないという状況であつた。そして丁度われわれがビキニの西方に近づいた時その第3回目が行われていたということがわかつたが,そのあと続いて実験は行われたのでわれわれは実験中に行つて調査をしたということすなわち俊鶻丸の調査結果はあくまでも実験中のものでしかも10回やつたうちわずか2回の後に得られたデータであるということになる。
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