論述
屎尿の化學的處理について
玉城 仁
,
川畑 愛義
pp.271-276
発行日 1948年3月25日
Published Date 1948/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200272
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おたずね
拜啓,ぶしつけながら突然書面をさしあげる失禮をお許し下さい,私は現在日立保健所に勤務している醫師でございますが,先生のあらわされた『實用環境衞生學』中223ページ,屎尿の終末處分法の化學的處理方法,硫酸を用いる方法をくわしく御教示いたゞきたいと存じます。
申上げるまでもなく,たゞ今蛔蟲による被害は相當深刻なものがございます。が,この對策として,すぐれた驅蟲藥をあつせんすることは必要なことでございますが,いかにサントニンを用いても,この食糧事情,肥料事情ではどぶにダイヤモンドを投じるのと同じではないかと思います。しかし,各家庭或いは共同肥料つぼで貯留消化法をおこなうにも,セメント等資材の點,長期間貯留しなければならない點で實行困難でございます。ところが,幸い當地には日立鑛山から硫酸が生産されております,加うるに鑛山は耕地がなく野菜を他から求めなければならないのですが,町に出るには比較的容易でも市の周邊に農村が少く,汽車で買出しに出歩くという有様でございます,又,鑛山の上になれば上になる程人工榮養兒が多く,發育不良兒も多いという現状で全く同情にたえないのですが,若し硫酸による乾燥法で肥料が出來ればこれとリンク制にでもして野菜を入手させることも困難ではないと存じます。現に,1日平均27石4斗の屎尿を汲取つて,それを貯留槽に投じて一定期間の後川に放流しているのでございまして,もつたいない限りでございます。
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