研究報告
都内における覺醒劑常用者間に発生したマラリアについて
山口 與四郞
1
,
池田 和雄
1
,
難波 諄士
1
,
岩崎 綾子
1
1東京都衞生局予防部
pp.50-52
発行日 1955年8月15日
Published Date 1955/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201586
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まえがき
一昨年の暮あたりから覚醒剤常用者間にマラリア患者が集団的に発生している事が判明し既に大阪,九州等の実例が報告されている。
東京都内でも昭和29年1月初旬より2月中旬にかけて5名の覚醒剤常用者が相次いで惡寒,戦慄,発熱のため芝の民生病院に入院し何れもマラリアである事が判明した。之等の患者は秋葉原ガード下,鍛治橋,浅草山谷等を根城とする浮浪者で何れも三日熱マラリア原虫が証明されたのであるが感染経路については患者発病の時期からみて「蚊に刺されて罹患した」とは考えられず,又患者の既往歴からみて外地にいた事のある二例は一応再発と云う事も考えられるが外地における発病時の症状が,惡寒,戦慄等もなく僅かに38℃台の熱が数日間持続したに過ぎない事からみてマラリアであつたとは断言出来ない。一方之等患者はすべて覚醒剤常用者であり注射器の消毒も不充分なまま直接静脈内に使用している事実からみて彼等がマラリア原虫で汚染された注射器を互に貸借使用することによる接種マラリアであろうと考えられる。
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