特集 公衆衞生に必要な新藥の知識
麻藥と覺醒剤
竹山 恒寿
1
1慈惠会医科大学
pp.64-67
発行日 1954年6月15日
Published Date 1954/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201409
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麻薬も覚醒剤も同じように社会的関心を持たされている薬品で,どちらもすぐれた薬効をもちながら"悪の薬"として名声が高い。薬にも,直接に感覚的な刺戟を人体に与えるものと,そうでないものとがあり,アルコールや催眠剤または麻薬や覚醒剤は,これを使つたときに特有な感覚的刺戟があることで知られている。こういう薬効を持つている薬は,本来の目的をはなれて嗜好品として使われる可能性ができてくるわけである。アルコールや阿片のように,はじめから嗜好品として出発したものもあるけれど,阿片アルカロイドの誘導体や覚醒アミン,パルビツール酸催眠剤,抗ヒスタミン剤などは,何も嗜好品としてつくりだされたものではない。しかし,そのもつている作用が一種の快感刺戟として働くために,人はこれを追求し連用し溺れこみ,ついには慢性中毒となつて心身を荒廃させ,社会的にも大きな問題を提供しているような始末である。ことに麻薬と覚醒剤のばあい,その害毒が大きいので,法律的にも特別な取締法がつくられて,濫用がいましめられているけれど,中毒者はあとを絶たない。麻薬の中毒者は日本全国に10万から20万人いると推定されているし,覚醒剤中毒者は50万人,あるいは100万人と称されている。どちらも違法行為である薬物耽溺なのでその実数はつかみ難い。しかし地域的な実態調査をすると,麻薬中毒者は10万人を超すと思われるし,覚醒剤中毒者は70万から80万人くらいは存在するように推定される。
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