連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・212
都内でもアマガエルに出会えたら
柳田 邦男
pp.726-727
発行日 2024年8月10日
Published Date 2024/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686202737
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私は,田んぼの広がる田舎町のはずれで,幼少期から高校を出るまで育ってよかったと,よく思う。今は東京・杉並の住宅街に住んでいるが,近くを流れる神田川沿いの遊歩道や小公園を散歩して,稀にトカゲやモンシロチョウなどに出会うと,子どもの頃の田んぼ道を思い出す。記憶に刻まれた幼少期の原風景というのは,心を穏やかにしてくれる大切なものだなと思う。昆虫や草花や小鳥などの絵本を手に取ると,つい熱心に頁をめくってしまう。
かわいらしいアマガエルの写真を大きく表紙に飾った絵本『ワレワレはアマガエル』を手にしたときには,一瞬にして私の心は幼少の頃にタイムスリップしていた。春に田んぼに水が張られた頃から夏にかけて,カエルの鳴き声が聞こえない日はないほどだった。
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