特集 慢性疾患の疫學
悪性新生物罹患の地理病理的観察
藤咲 暹
1
1東北大学医学部公衆衞生学教室
pp.15-27
発行日 1955年3月15日
Published Date 1955/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201537
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緒言
我が国におけるここ数年来の結核をはじめとする各種伝染性疾患の死亡の著しい減少は,脳出血,惡性新生物など非伝染性疾患死亡の相対的増加を招来した。今やこれら非伝染性疾患に対する何らかの公衆衞生対策が強く要望されるに至つている。惡性新生物に対する対策を考究するためには,唯死亡統計について疫学的検討を加えるだけでは不充分であり,その罹患状況についても可能の限り調査して地理病理的観点よりその特長を把握することが必要であることが強調されている。米国,デンマークでは惡性新生物患者についての地理的調査研究が行われており,その成績が既に発表されているが,我が国においては従来かかる地理的調査研究が行われたことはなかつた。東北大学医学部公衆衞生学教室は,この問題に積極的な関心を持ち,昭和26年以降宮城県衞生部,宮城県医師会の援助を得て,宮城全県下の惡性新生物罹患状況の調査を行つて来た。ここに宮城県惡性新生物罹患調査結果の概略と地理病理的観点よりの国際比較をなした結果を報告する。
なお,本報告においては惡性新生物を白血病,ホジキン氏病等を含めた広い意味で用いることにする。
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