形態学的検査と技術 血液と病理
わだい
前立腺癌の地理病理学
矢谷 隆一
1
,
白石 泰三
1
1三重大病理学
pp.642
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203721
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前立腺癌の死亡率は各国あるいは人種で差があるが,それを大きく分けると3群に分けられる.第一は死亡率の高いアフリカあるいは黒人型,第二はそれよりやや低い値を示す欧米あるいは白人型,第三は死亡率の低いアジアあるいは黄色人種型である.
一般的に,欧米では前立腺癌の死亡率が高いので関心が深いが,日本の死亡率は欧米の約1/10であり,胃癌や肺癌などに比べると関心が薄い.しかし近年,日本人の死亡率は増加しており,将来さらに高くなる可能性がある.この日本人における増加の原因については,ハワイへ移住した日系人の前立腺癌死亡率は,白人と日本人との中間値を示すことや,日本人例を県別にみると,東京における死亡率が高いことから,生活様式の欧米化と関連づけて考えられている.生活様式の欧米化とは,具体的には脂肪摂取量と関係が深い.高脂肪食は前立腺中のホルモン量を変化させ,これが前立腺癌の発生や増殖に関与する可能性が指摘されている.
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