研究報告
農村に於ける屎尿処理施設とその効果に就て
川本 勉
1
1千葉県五井保健所
pp.39-43
発行日 1954年4月15日
Published Date 1954/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201371
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緒言
戦後寄生虫卵の保有率は,都市たると農村たると問わず漫延増加の傾向にあり,その人体に及ぼす影響は図り知られざるものがある。従来寄生虫に対しては予防対策上の理論は相当進歩して来たが,独りその実施面に於て遙に立遅れの感があり,特に我々衛生行政に携わる者にとつて奮起一番何んとか打開しなければならない事を痛感する。著者は当管内に於て早くから当所外来患者に余りにも多く鈎虫の保有者がある事実に注目し,昭和22年来より管内農民を対象に調査を実施して来たが,此処に驚くべき事実を見出した。即ち,当管内を縦貫する最大河川たる養老川の下岸流域地帯がその鈎虫保有率70%前後,蛔虫保有率10%内外で,鈎虫の感染幼虫の成育に最も適しておると言う事である。何故多いのか之の対策を如何にすべきかと言う事はその人体に及ぼす影響から見ても当地方にとつて最大問題たるを失わない。そこで著者は之の問題を千葉県知事並に千葉県寄生虫対策委員会に提案したところ,県に於ては之の問題に対する措置を県全体の寄生虫予防対策上の一事業として認め,当地方を鈎虫浸淫地区に指定しこの為屎尿処理施設に対する多額の補助金を獲得した。
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