特集 最近の栄養問題
時評
ビタミンとミネラルの亂用問題
柳 金太郞
pp.6
発行日 1953年10月15日
Published Date 1953/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201268
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近年ビタミン類の種類が増加し,その生理的作用も開明されるものが増加するにつれて,世人のビタミンへの関心は益々増加し,加うるにミネラル殊に微量元素に関する知見が急速に進歩したことに促されて,ビタミン類とミネラルとを併合した綜合製剤が続出する傾向にあり,広告術の発達と相俟つて盛にその重要性と効果とが宣伝されて来たようであるが,人間心理の弱点は常に新を追い奇を求めるのが常であり,殊に病弱者や老人は生への執着に駆られて兎角それらを乱用する傾向のあるのは自然であり,又医師の中にも無批判にビタミン類の高単位によって患者の歓心を買つたり,自己の收益を増加したりせんとする傾向も絶無とは言えないので,この問題を一応反省して見るのも徒爾ではないと思う次第である。
先ず乱用と言う言葉の意味を吟味する必要があるが,これは通常不必要な程度の使用に対して用いられるのが常であつて,それが果して有害であるか否かの問題は必ずしも含まれておらないようである。そこで先ずビタミン類に関して考えて見ると,今日多くのビタミンについてその生理的必要量が明かにされており,一旦疾病に罹つた場合と雖もこの必要量の数倍から精々十数倍を使用すれば治療の目的は達せられるのが通例であるから,それ以上を一時に使用することは不必要の部類に属するのである。
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