銀海餘滴
ビタミンとミネラルの亂用問題
pp.74
発行日 1954年1月15日
Published Date 1954/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201725
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近年ビタミン類の種類が増加し,その生理的作用も開明されるものが増加するにつれて,世人のビタミンへの關心は益々増加し,加うるにミネラル殊に微量元素に關する知見が急速に進歩したことに促されて,ビタミン類とミネラルとを併合した綜合製劑が續出する傾向にあり唯單に多々益々辯ずると言つたような考え方で徒らに高單位のビタミン類を使用することは患者の經濟力に對する冒涜であるばかりでなく,その生命に對ずる脅威とさえなつて,醫師たる者の絶對に爲す可からざる事であると考えられる。これよりも更に輕きに範圍内においての例としても,日本人に最も縁の深いビタミンB1の使用に關しては,1日の必要量が1-10mg位であるから,B1缺乏の状態にあつたとしても,1日5-10mgを内服せしめることによつて數日から10數日の中に奏効する筈であり,假りに内服不向きの例においても1日3-5mg位を注射して反復すれは良いわけで,1回に10mgも20mgをも靜注するようなことは脚氣の衝心でも迫つておらない限り不必要のことに屬すると思われるのである。
ミネラルに關しても全く同樣であつて,日本人の食物に平素から不足し勝ちな種類のものを生理的必要量の範圍内で常用せしめるような處方の製劑にすべきであり,唯ミネラルに屬すると言う理由だけで燐やマグネシウムの如きものまでも混合して置くことは,却つて有害であると言わねばならないのである。
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