醫藥隨想
衞生村の話
梶山 勳
pp.137-138
発行日 1951年2月15日
Published Date 1951/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200790
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ハエやカやノミやシラミのいない村,宮城縣伊具郡西根村を,石垣純二さんにすゝめられて10月はじめ視察したが,『衞生村』というより『清潔な村という感じだつた。家の中でも外でも山道でも畦道でもりつぱに清掃している。そして水も空氣も澄んでいる。野良仕事をしている百姓さんまでござつぱりした仕事着を着ている。突然どんな農家に飛びこんでみても不清潔な家はない。臺所が整然としていて板ばりがぴかぴか光つている。風呂場も別所も別棟だが,風呂は見事な長州風呂だし,便所は濾過式のものがある。こゝ一,二年中には全部濾過式のものになるだろうと役場の話だが,役場がすゝめてるわけじやなくみんな農家の希望なのだ。牛小屋でも豚小屋でも鶏小屋でも清潔で惡臭がない。10月だからハエが少いのは當り前だが,それにしても3日間に隨分農家をまわつて,たつた2匹だけ見た。さや豆の出盛期だつたから,農家でさや豆とイチジクの砂糖煮をよくご馳走になつた。容器も清潔で氣持がよかつたが,どうも料理がまずい,さや豆に鹽はふりかけないし,燒きたてのキノコに醤油と砂糖をふりかけてじゆくじゆくしている。米でも野菜でも10年20年前と少しも變つていないらしい。
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