厚生行政の展望
母子衞生對策の今後の課題
近藤 宏二
pp.107-109
発行日 1949年8月15日
Published Date 1949/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200514
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1 妊産婦死亡の動向と母性保護
公衆衞生のあらゆる分野に於て,アメリカに比べて我が國の成績は,30年から50年も進歩がおくれているが,その中にあつてひとり,妊産婦死亡率だけは,日本はアメリカより格段に低い好成績で,而も遂年一層低下しつゞけてきた。然るに1937年頃からアメリカの妊産婦死亡率は,その下降速度が急調子となり,やがて日本の値に追いつきそうになつて來た。これは主として,アメリカの妊産婦死亡の最大原因である産褥熱死亡が,ズルファ劑やペニシリンの使用によつて,急激に減少して來たためであると見られている。ところが日本の妊産婦死亡の最大原因は妊娠中毒症であつて,アメリカ同樣化學療法の進歩があつても,日本の妊産婦死亡も全體の數には,そうひゞいて來ていない反面に,日本では,昨年あたりから,産褥熱による妊産婦死亡がやゝ増加の傾向を示して來た。日本で最近人工妊娠中絶による色々の事故が頻發していることは,實地醫家特に産婦人科醫の認めているところであるが,之が産褥熱死亡となつて統計上にあらわれて來たとなると,一段と警戒しなければならない。
Copyright © 1949, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.