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世界で65歳以上の人口が増加している中で,加齢性疾患であるパーキンソン病(Parkinson's disease:PD)罹患者数の増加が見込まれています.1990〜2015年にかけて罹患者数は2倍に増加し,2040年には罹患者数が1200万人を超えると予測されており,この状況は‘Parkinson pandemic’と呼ばれています.PDは指定難病ですが,その中でも罹患者数が多く,厚生労働省が示す指定難病の要件である「おおむね人口の千分の一(0.1%)」を超えてしまう可能性があります.罹患者数が多いほど,行政への働きかけは強力なものとなりますが,その一方で医療費の助成が受けられなくなるかもしれないというジレンマを抱えています.
コロナ禍では外出や他者との交流が減り,リハビリテーションや自主的な運動の機会が著しく減少しました.懇意にしているPD友の会の理事の方にお話を伺うと,通所サービスを利用していた方の中には,感染対策のため事業所が送迎エリアを縮小したため,リハビリテーションの中止を余儀なくされた方もいたそうです.また,毎月患者さんと家族で行っていた定例会も一堂に集うことができなくなり,会員にとって貴重な交流の場が失われました.一方で,コロナ禍ではオンラインを活用した遠隔リハビリテーションが飛躍的に発展しました.自宅から現地への移動やそれに伴う時間や費用を節約することができるというメリットがあり,対面とは異なる新たなコミュニケーションツールとして確立しました.しかし,高齢者の中にはオンラインでの会話に馴染めず,徐々に活用しなくなった方もいらっしゃいます.また,高齢世帯ではそもそもインターネット環境が整備されていない家庭もあります.今後はインターネットリテラシーをもつ患者さんが高齢化するため,このような課題は今よりも減るとは思いますが,運動指導を行ううえでテクノロジーではどうしても補うことのできないものがあります.実際に患者さんの体に手を添えることで得られるさまざまな情報からセラピストは直感的,分析的に臨床推論を展開することができます.刻々と変化する筋肉の収縮や重心の位置変化,そして微妙な心理的なゆらぎを指先で捉え,その時々に適切な身体の誘導や声かけを提供することができる,これこそが対面リハビリテーションの最大の利点であることにあらためて気付かされました.今後,ますます,遠隔リハビリテーションは不可欠なツールとなると確信していますが,有効性という観点から対面・遠隔,双方の適応,併用についてはこれから,明らかにしていく必要があります.
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