特集 第2囘日本公衆衞生學會研究發表抄録
午後の部
(14)囘虫の少い農村の調査
水島 治夫
1
,
木藤 壽正
1
1九州大學醫學部衞生學教室
pp.141-142
発行日 1949年1月25日
Published Date 1949/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200401
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宮崎縣都城市一帶の小學校兒童の囘蟲寄生率は最低72%,最高100%に及んでいるが,宮崎市本郷南方國富小學校兒童のそれは平均21%に過ぎない。その感染率の極めて低い理由につき前述農村の實地視察をして次の如き面白い事實を認めた。この村の人には昔から「新しい生の糞便はきたないし,又肥料としても利かない。決して生肥は使うべきものではない」という觀念が徹底していて,糞便處理は一部は堆肥を混ぜ,一部は肥溜に貯溜腐熟せしめている。特に感嘆することは各戸にすばらしくりつぱな石造の堆肥小屋があることである。廣さはたいてい間口3間,奥行2間で石壁は高さ160cm位,厚さ20cm位,その上部1間位が板壁となつていて,屋根には瓦がふいてある。堆肥は厩肥,草,塵埃等を約20cm位に積み,その上に糞便をかけさらに之を繰返しておよそ石壁の高さにする。すでに醗酵の最盛期を過ぎた堆肥中の濕度を熱電計で測定したが低いもので攝氏44度,高いもので攝氏56度であつた。十分完成しぼろぼろになつた埋肥中には囘蟲卵を鏡檢し得なかつた。初期の醗酵熱が相當に高く腐熟するまでの時間が長いことから考えておそらく全部死滅するのであろうと推察せられる。
もし全農家が生の糞便を全部堆肥にすれば最も上等な肥料を自給し得るのみならず,腸管寄生蟲卵をことごとく殺滅することができ,正に一石二鳥であると思われる。
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