研究と資料
特殊環境に於ける疥癬淫侵度に就て—岩國少年刑務所に於ける觀察
山田 明
1
1岩國少年刑務所醫務課
pp.22-26
発行日 1948年5月25日
Published Date 1948/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200290
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著者の醫學的對象たる岩國青年刑務所收容受刑者は,過去半年間(昭和21年5月−10月)に5月の53.29%を最高とし最低26.31%(9月)の疥癬患者をもち漸次減少の傾向にある。即ち,5月に比較し半年後の10月には20%の減少を正しい醫學の行使によりかち得て居る。
併し乍ら,この減少の速度は決して誇るに足るべきものではない。それは著者が全力をあげて疥癬に對する闘爭をなしつゝある一方に於ては,當所が中國西半部全域及び四國の1部よりの全青少年受刑者を收容すべき任務を有し,而も彼等の間に於ける疥癬淫侵度は38.85±1.85%の極めて高い率を示し,之等新入所疥癬患者が著者のもつた本病患者の30%以上を占めて居り,そのために著者の拂つた正しい—著者はそう信じて居るのであるが—努力にも拘らず尚旦つ1箇月平均37.9±2.56%の疥癬患者をもつことを餘儀なくせられて居るからである。
更に,本調査成績よりして過去の文献の夫とは比較にならぬ程高い淫侵度を有して居ることを知ると共に,新入所者に於ける本病蔓延状況よりして彼等の來た諸地域に於ける夫をも窺ひ得べく,敗戰後の社會經濟生活水準の低下より本病が如何に猛威をふるひつゝあるかをも知るに足るであらう。疥癬を規尺として窺つた國民全般の皮膚清潔度の低下を悲しむものである。
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