論説
平均壽命の延長
野邊地 慶三
pp.242-243
発行日 1947年10月25日
Published Date 1947/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200191
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米國の公衆衞生は今日世界に冠絶するに至つて居るが,之は前世紀の中葉Massachusetts州地方から展開し初められた約100年の歴史をもつ組織的な公衆衞生運動の結實したものである。今此の期間に於ける米國の公衆衞生發達の跡を平均壽命を尺度として辿つて見るに,次の如き事實が見られる。
1850〜1900年の50年間,即ち上述の米國の公衆衞生活動史の前半期に於て,其の中心舞臺であつたMassachusetts州民の平均壽命は男子は7,8歳,女子は8,9歳の延長を示して居る。又1900〜1939年の期間,即ち上述の歴史の後半期の當初40年間に米國の屆出制度施行前全部に於て15年の平均壽命の延長が見られた。そして昨1946年には米國民の平均壽命は實に65歳に達し,1850年當時の平均壽命に比し,又我國の最近の平均壽命に比し約20年の差があることが觀取されるのである。平均壽命は公衆衞生の成果を示す綜合的な示標であるので,此の約20年の平均壽命の延長こそは,米國の公衆衞生運動100年の里程標たるべき好箇の金字塔として鑽仰すべきものである。
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