論述
種々の託兒制度と家庭問題の將來
木田 文夫
1
1熊本醫科大學
pp.198-204
発行日 1947年9月25日
Published Date 1947/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200181
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1.新しい託兒制度の必要
産兒問題と託兒問題とは,わが國がいま,文化國として出發するためには,どうしても眞劍な對策を必要とする公衆衞生學上の第一の課題であろう。とりわけ託兒制度をとりあげたい。といふのは,家事と子澤山に追はれたわが國の母が,その子供たちの性格の決定や,智能の素地,あるひは社會道徳や教養の育成にもりとも大切な小兒年齡満2歳乃至5歳の時期をただ叱り聲,怒り聲と,落書をしたり公園の花を折つて遊ぶ無關心な放任の中に過させてしまひ易いからである。よく言はれるやうな三つ子の魂百までといふことわざは,今日の新しい異常兒童や不良靑年の研究で,ワロンやベンジャミンその他によつて證明された事實である。
とくに社會人文化國人としての公衆道徳の教化は,智育に先立つ學齡前期に身につけておかせなくてはならぬ。今日わが國の交通機關や街頭や浴場いたる處で見られる人の迷惑は少しも意に介しないといふ非社會性は,敗戰によつて新たに生れたものではなく,昔から日本人の特徴であつて,窮境によつて目につき易くなつたばかりである。その原因の大部分は家庭の父母の無教養にある。その幼兒がまた同じ父となり母となるのである。
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