原著
本邦肺結核訂正死亡率に及ぼす社會的諸要約の影響
吉岡 博人
1
,
良田 圭子
1
,
日比 貞子
1
1東京女子醫學專門學校衞生學教室
pp.194-200
発行日 1946年12月25日
Published Date 1946/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200074
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緒言
殴米諸國に比し,本邦に於ける肺結核死亡率が依然として高率であり,且つ低下の極めて遲々たることに鑑み,この死亡率の背後に横たはる諸事情を科學的に解明することの必要は,絶えず識者により強調せられて來た。しかしそれにも拘らず,之等は單なる懸案に了らざるを得ない事情が伏在してゐた。と言ふのは元來肺結核死亡率の高低乃至増減を左右するものが主として社會的因子であることに基因してゐる。何故ならば,本邦に於ける肺結核死亡率の日本的特徴である靑年結核の高死亡率は,年代的推移について研究せる結果,日本民族の生物學的體質に依るものではないことが明がとなり(1),そのよつて來るところは社會的因子にあると推察され,又た間接的には肺結核死亡率に及ぼす氣候要素の影響について研究せる結果,自然的影響については認められなかつたからである(2)。
しかしてこの社會的因子の探求には,社會經濟に關する豊富なる資料の存在と,之等を驅使し得るだけの準備がなければならない。然るに從來の我國に於ては之等を求めることは極めて困難であり,率直のところ不可能と稱しても過言ではない。しかし,かゝる制約を一應認めつゝも,この課題の科學的解明に一歩なりとも進める爲の試みがなされなかつたわけではない。即ち,既に結核に及ぼす影響に關しては,部分的な外觀的なものであるにしろ,從來多くの研究がなされ,吾々は之等の報告に興味深く接して來た。
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