原著
最近に於ける本邦乳兒死亡率に及ぼす社會的諸因子の影響
松田 摩耶子
1
1東京女子厚生專門學校衞生學教室
pp.275-286
発行日 1949年3月25日
Published Date 1949/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200438
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言
さきに水島が「本邦に於ける乳兒死亡率に及ぼす社會生物學的諸因子の影響」(1)なる論文を發表し,本邦に於ける乳兒死亡率に,如何なる社會生物學的因子が重要なる影響を及ぼしているかを部分相關法を以て檢討した。即ち,大正14年の府縣別の乳兒死亡率の最低と,出生率,人口密度,1世帯平均人員,醫師數,教育の普及,女子の平均初婚年齢,個人所得等7種の社會生物學的因子との相關を檢討した結果,是等7種の因子を考慮した範圍内に於ては,女子の平均初婚年齢と教育普及度が,乳兒死亡率に對し比較的重要なる因子として作用していることを明かにした。
而して,本邦に於ける大正14年(1925年)の乳兒死亡率は生産1,000に付き142.4であり,全國的に乳兒死亡率の算出されている最後の年である昭和18年(1943年)の乳兒死亡率は86.6で,大正7年(1918年)の最高値188.5の1/2以下に減少している。しかし今なほ歐米諸國と比較すれば2倍乃至2倍半の高率にある(4)(5)。元來乳兒死亡率は衞生状態の良否を鋭敏に反映するものであり,それ故に乳兒死亡牽は1國の衞生状態を比較する第1の示標と思われる。此の乳兒死亡という社會生物學的現象に影響する因子を擧げれば物理的,人文的,社會的,生物學的因子等際限もなく,これらが直接に或は間接に相互に複雑に交錯していると考えねばならぬ。
Copyright © 1949, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.