映画の時間
—窓の向こうに無限に広がる人生があった—幸せのありか
桜山 豊夫
pp.867
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200032
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コミュニケーションの手段が障害されていると,知的発達レベルを判断するのがはなはだ難しくなります.2歳のときに熱性疾患で三重苦を背負ったヘレン・ケラーの場合も,もしサリバン先生がいなければ,知的発達は望めないと判断されてしまったかもしれません.この間の状況は「奇跡の人」として舞台などで紹介されていますが,映画では1962年に製作されたアーサー・ペン監督作品が有名です.
今月ご紹介する「幸せのありか」の主人公マテウシュは脳性マヒのために自分の意思を伝えることができず,知的発達が望めないと診断されます.医師は,「植物のような状態」である,と言います.診断に納得のいかない母親は,食事の支度をしているとマテウシュは興奮したそぶりを見せる,と言いますが,医師からは「餌をみた犬が尻尾を振るのと同じだ」と言われてしまいます.しかし母親は,彼を施設に入れることなく,愛情をもって息子を育てます.また,父親は理解能力に疑問符のついている息子に対し,健常な子供に対するのと同じように接します.結果としてそれが,主人公の精神発達を促したのでしょう.
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