特集 環境問題の多様性
環境問題とリスクコミュニケーション
2.電磁波の健康影響評価の現状と展望
宮越 順二
1
1弘前大学大学院保健学研究科
pp.479-482
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101079
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背景
近年,電磁波曝露の人体への影響の有無について,国際的に活発に議論されている.われわれの生活環境には,家電製品の発生する電磁波はもちろんのこと,医療現場におけるMRIや電磁波加温装置,また,変電所や送電線下の交流磁場,さらに将来に実現性があるリニアモーターカーや超電導電磁推進船など,地球上の自然界に存在する以上の電磁波に曝される機会が増している.われわれが現在から将来にかけて生活環境中曝される可能性が高いのは,医療の診断におけるMRIの強定常磁場や商用周波数領域における極低周波(ELF:Extremely Low Frequency)変動磁場,そして最近の普及ぶりが目覚ましい携帯電話を代表とした高周波領域の電磁波やIHクッキングヒーターからの中間周波数帯電磁波である.
歴史的には,1979年に米国の疫学者が,送電線の近くに住む子どもの白血病の発生率が高いことを発表したことが始まりである1).その後,ELF電磁波を主として,疫学研究に加えて,動物や細胞を用いた生物学的研究が行われてきた.これまで,一部の疫学調査により,ELF変動電磁波の発がん影響として陽性の結果が報告されている2).
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