特集 NCD(非感染性疾患)対策
イングランドのNCD対策―心血管疾患アウトカム戦略を中心に
松田 亮三
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1立命館大学人間科学研究所・産業社会学部
pp.307-311
発行日 2014年5月15日
Published Date 2014/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401103005
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はじめに
非感染性慢性疾患(non-communicable disease;NCD)対策にどのように取り組むかは,各国政府・公衆衛生機関が直面している課題である.本稿では,わが国での政策形成へのヒントとして,イギリス,特にイングランドの非感染性疾患対策の動向を検討したい.
イングランドの公衆衛生体制は現在大きな変革期にあり,70年代から続いていた国民保健サービス(National Health Service;NHS)を基軸とする体制から,公衆衛生の統括機関としてイングランド公衆衛生庁(Public Health England)を配置し,その専門的助言・指揮のもとで地方自治体とNHSが協力して実施する体制に変わっている1).
大規模な組織改革を伴うこの改革が順調に実施されるかどうかは,今後の展開をみていく必要がある.そこで本稿では,政策実施の場面ではなく,むしろ非感染性疾患,心血管疾患対策の戦略がどう構築されているかについて,特に2013年に保健省が公表した「心血管疾患アウトカム戦略(Cardiovascular Disease Outcomes Strategy)」2)について検討する.心血管疾患対策に焦点をあてるのは,それが政策的に注目を浴びているNHS健康チェック(NHS Health Check)の創設・展開とかかわっているからである.
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