連載 講座/健康で持続的な働き甲斐のある労働へ―新しい仕組みをつくろう・20
産業技術職(エキスパート)の位置づけと改革の方向性
酒井 一博
1
1公益財団法人労働科学研究所
pp.919-922
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102886
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はじめに
快適な環境の下で安全で健康的に,そして自律的に働くことはすべての人の権利である1,2).
すべての企業は,産業安全保健に取り組む組織と体制を整備しなければならない.そのためには,第1に,「経営の安全保健」と「現場の安全保健」がほどよく融合し,両者の一体的な活動が強く望まれるところである.しかし,わが国の安全保健を俯瞰すると,現場の安全保健は,多数の企業において以前から活発に取り組まれている一方で,経営の安全保健への関与と実際の取り組みは多分に属人的で,システマティックに推進されているとはいいがたい状況にある.第2に,近年の社会状況と産業活動の変化をみれば,伝統的な安全保健活動を繰り返すだけでなく,変化の先にあるリスクを予知・予見して,予防対策を講じることが重要である.第3に,産業安全保健を担う人材の育成およびその人材を活用する企業のポリシーと器量が必要である.
現場の状況に精通し,かつ産業安全保健の専門性を身に付けた産業技術職(エキスパート人材)の育成が急務である.
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