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はじめに
昭和39(1964)年に米国のライシャワー駐日大使が暴漢に襲われた事件は,輸血がもとで同氏が肝炎を発症したため輸血用血液の安全性が問われる結果となった.これをきっかけとして血液確保の手段としての売血や預血(預金のように平素から自分の血液を提供し,必要なときに提供量に応じて利用するもの)制度は否定され,血液を確保するための唯一の手段としての人々の善意に支えられた献血制度が確立し,現在に至っている.
しかし,少子高齢化は,献血可能人口の減少と輸血を必要とする高齢者の絶対数の増加を招いている.献血者数は,昭和60(1985)年の約870万人(延べ人数)をピークにして年々減少し,平成19(2007)年には493万9,550人と最も落ち込んだ.その後は持ち直し,平成23(2011)年は525万2,182人であった(図1).減少傾向にある献血者であるが,とりわけ10~20歳代の献血者の減少が続き,このままでは血液製剤の安定的な供給が困難となる事態も生じかねない(図2).
血液製剤は「輸血用血液製剤」と「血漿分画製剤」に大別される.国内自給を旗印に掲げているものの,後者のアルブミン製剤などに関してはいまだ輸入に頼っているものがある.前者は有効期間が短いことも相まって100%国内自給が達成されている.しかし,国内自給が達成されている輸血用血液製剤についても,現在の献血率および予測される少子高齢化が進んだ場合,需要がピークを迎える2027年には,献血者約101万人分の血液が不足することが指摘されている.
献血可能人口が減少する中,献血者を確保するためには,新たな献血者の開拓と既献血者の献血回数を増加する方策,そして採血基準そのものの見直しが策として考えられる.
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