ひとやすみ・94
輸血と献血
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.21
発行日 2013年1月20日
Published Date 2013/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104435
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- 文献概要
日本における献血制度は,1964年にライシャワー駐日アメリカ大使が暴漢に刺され,売血による輸血後肝炎を発症したことを契機に確立された.以後,手術を行うわれわれ外科医は大いなる恩恵を受けてきた.常日頃仕事で血液を使う立場で経験した,輸血に関連した話題を提供したい.
今から35年ほど前の研修医時代のことであるが,交通事故で肝破裂をきたした患者さんが救急搬送されてきた.緊急手術を施行したら,腹腔内に大量の血液が貯留し,肝臓からの出血も続いていた.大量輸血が必要であったが,血液センターからの血液供給には限界があった.そこで外科のボスは,航空自衛隊基地がある町の知り合いの町長に直接電話を掛けた.その町長からの要請に応じ,深夜にもかかわらず制服姿の屈強な若者が100人ほど駆けつけてきた.われわれ研修医はベッドに2人ずつ寝かせ,200mLバッグに入るだけ採血した.そして,全血交差試験しただけで次々と手術室へ運び輸血した.
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