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はじめに
1.ゆうパック事故で露呈した地方衛生研究所の実態
平成23(2011)年10月,地方衛生研究所(以下,地研)から発送された患者検体入りのゆうパックの容器が爆発する事故が発生した.検体や病原体を輸送する手段として,ゆうパックは郵政公社時代から危険物(感染性物質)の運送を,安価な料金で引き受けてもらっていた.爆発の原因は,密閉容器にドライアイスを入れたまま発送するという,初歩的なミスによるものであった.
しかしその後,事態は思わぬ方向に進展した.日本郵便株式会社が,公益性を考慮しての優遇措置は継続できないとの理由から,病原体の輸送については,頑丈な4重容器に入れた上で,高額の運送料を課すという規定の変更に踏み切ったのである.もちろん,郵便会社の言い分はもっともであり,事故を受けてのこのような対応は仕方のないことであろう.それよりも,職員のミスはあったにせよ,これをチェックするバックアップ体制が当該地研になかったことがむしろ問題と考えられた.また,その地研では職員数がギリギリまで削減されており,チェック体制も組めないような定員配置であったことものちに判明した.
この事故の影響は,病原体輸送手段を今後どう維持するかという問題として,全国の地研や医療機関に波及した.また,公的試験研究機関の職員や予算の大幅な削減が,このような取り返しのつかない事態を招く結果となる,という実例である.“聖域のない”行政改革や地方分権の推進が,地研にこのような「地盤沈下」をもたらしていることは事実であり,今回の事故は,すでに「危機的な機能低下」を来している地研が現に存在するという事実を,表面化させたものと見ることもできる.
地方財政はそれ程までに逼迫している,ということであろう.
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