特集 原子力災害と公衆衛生
コラム
3.11東日本大震災に伴う福島県双葉郡の医療課題
井坂 晶
1
1福島県双葉郡医師会
pp.956
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102609
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東日本大震災は,M9の大地震,20mに及ぶ巨大津波,それに原発事故と,前代未聞の国難により2万人に及ぶ犠牲者を出した.東北の太平洋沿岸は,ことごとく甚大な被害を被ったが,予想もしなかった原発水素爆発まで起こり,放射能の飛散による取り返しのつかない人災となった.長年培ってきた生活の場をしばらく奪われ,住民は長期に亘って避難生活を余儀なくされた.おまけに福島県は風評被害を受け,特に福島第一原発周辺では長期立入禁止が続き,故郷の家は朽ち果て,手の付けようもない状態になった.帰れる目途も立たない中で,「町の復興,医療の復興は?」と言われても,難しい.廃炉まで40年,長期帰還困難,精神的負担が増すばかり.仮の町構想も遅々として進まず,国や県の対応は遅すぎる.
僅かながら避難解除になった川内村,広野町は役場機能を戻したが,住民が帰らず,復興にはほど遠い.川内村には,もともと国保診療所があり,機能再開して診療科を増やし,近隣の病院とも提携し,急患,緊急入院の協定も取り付けている.しかし,子どもは数えるほどで,高齢者がほとんど,介護施設や集合住宅などの充実が重要である.資金やスタッフ不足などの問題もある.
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