特集 原子力災害と公衆衛生
原発被災地 南相馬から
菊地 安徳
1
1医療法人相雲会小野田病院
pp.957-960
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102606
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“その時”
2011年3月11日.“その時”は午後の手術室で起こった.腹に響く地鳴りに続いて,床から突き上げる衝撃.恐怖に慄く悲鳴と散乱する手術器材の金属音が重なる.“その時”がどれ程続いたかよく覚えていない.繰り返す余震に恐怖しつつ,どうにか手術を終わらせた.被害を確認した屋上で,遠く海岸線に荒く波立つ白い帯を見た.まさか,未曾有の惨事がそこで起きていようとは.明日には逃れ得ない苦難がこの地に訪れようとは,思いもよらなかった.
南相馬は幸いにもライフラインは保たれた.水も電気も早期に復旧したが,電話網をはじめ情報網が混乱を来たし,しばらく情報源はテレビのみとなった.
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