フォーラム
公衆衛生的視点から緩和ケア,グリーフの臨床を考える
岩本 喜久子
1
,
山上 実紀
2
1札幌医科大学寄附講座緩和医療学
2一橋大学大学院社会学研究科
pp.253-255
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102064
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公衆衛生的緩和ケアという概念について
2009年のカナダ緩和ケア学会やAsia Pacific Hospice Network学会で「Palliative care in public health:公衆衛生における緩和ケア」という言葉をよく耳にした.WHOが2006年に発表したCancer Control Knowledge Into Actionの中でも,“palliative care with a public health approach”という表現が頻繁に使われている1).日本では緩和ケアというと,病気による苦痛を医学的介入によって緩和するという臨床医学としての捉えが一般的である.しかし,ここで言及された緩和ケアの捉え方は,いまだ病気や疾病を持たない市民,もしくは緩和ケアを今現在必要としていない患者を含めた,生活者,共同体をもケアの対象としている.言いかえると,緩和ケアは,疾病になる前,緩和ケアが必要となる前に,人々の健康増進を図ることを目的として,一般市民を対象とした組織的な衛生活動・啓蒙活動が必要であるとしているのだ.
かつて公衆衛生は,1949年にウィンスロウによって「共同社会の組織的な努力を通じて,疾病を予防し,寿命を延長し,身体的・精神的健康と能率の増進を図る科学・技術である」と定義された.緩和ケアを社会に生きる全ての個人の身体的・精神的健康と能率の増進のための技術として捉えると,公衆衛生の考え方と矛盾はない.
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