連載 トラウマからの回復─患者の声が聞こえますか?・11
私は幸せになってはいけない
佐々木 洋子
1
1NPO法人JUST(日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン)
pp.142-145
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102033
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私が精神科につながったのは,病気とか症状とかいうものがきっかけではありません.ひとつの困った問題を抱えていたからです.それは,大切なものを破壊してしまうことでした.壊すのはいつも大切な人間関係で,一番大切な人を一番傷つけて,失ってしまうことをやめられないのでした.
最初にそのことに気づいたのは18歳の頃,初めて男性とお付き合いをしたときです.相手を好きになればなるほど,大切にされればされるほど,不安になってしまうのです.そして,いつかこの関係は必ず終わるという恐怖が,幸せの裏側にぺったりと貼り付いていました.その思い込みを実証するためであるかのように,私は相手に対して不条理な言動をとりました.相手がよい人であればあるほど,私への愛が深いほど,これでもか,これでもかと,私は無理なことを要求し,ひどいわがままと,言葉の暴力で振り回し,「こんな私でも,あなたは私を捨てませんか?」と問い続けました.相手は去り,私の思い込みは強固なものになっていきました.
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