連載 地域保健従事者のための精神保健の基礎知識・9
精神保健・自殺問題の実践を科学する
稲垣 正俊
1
,
大槻 露華
1
1独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所自殺予防総合対策センター
pp.790-794
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101904
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はじめに
自殺対策基本法の成立,自殺総合対策大綱の閣議決定を契機に,各地で様々な自殺予防活動が開始された.自殺総合対策大綱には対策が必要とされる30をも超える領域が掲げられている.活動の効果に関する裏付けの記述や,対策の優先順位に関する記述はなされていない.自殺総合対策大綱の発表の1年後には,自殺対策加速化プランが発表され,自殺総合対策大綱が一部改正された.今年の3月には内閣府から「いのちを守る自殺対策緊急プラン」,5月には厚生労働省から自殺・うつ病等対策プロジェクトチームのとりまとめが報告された.
わが国の自殺予防対策は,自殺総合対策大綱という長期的なイニシアティブとともに,短期間に様々な一部重複する政策ポリシーが並行して示され,複雑なものとなっている.わが国の自殺予防の戦略や活動計画が厳密な科学的知見に基づく内容ではないため,短期的な緊急の課題と,真に重要で長期に亘る対策の優先順位を決めるための基準が明確に示せていない.
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