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はじめに
多くの親子保健事業では,乳幼児健診を始めとして相談などで,障害や疾患の発見につながることが少なくありません.障害や疾患が疑われたとき,見つかったとき,それをどう保護者に伝え,どのように対応するかは,親子保健での重要なテーマの1つです.
乳幼児健診では,保護者の多くは,通知が来たから,あるいは広報などに掲載されているから健診に来ますので,自分の子どもは元気であると考えていることが多いのは当然ですし,健診の場で何らかの障害や疾患を発見されるとは夢にも思っていません.もちろん保護者が発達の遅れや皮膚の異常など,何らかの主訴を抱えて健診に来る場合もありますが,こうした主訴よりは,食欲がない,ぐずる,眠らない,泣き止まないなどの生活上の不安を訴えることのほうが多いと思われます.ですから健診の場でも,気軽な相談の場でも,疾患や障害の疑いを告げることは,保護者を混乱や不安に陥れることになります.もちろん事実だから告げた,ということでは無理があります.治らないかもしれない障害を告げられた母子が,健診の帰りに走ってきた電車に飛び込んでしまうかもしれません.
一方で,健診や相談の場では,ダウン症など身体的な特徴から明らかな場合を除いて,障害や疾患は疑いに止まります.健診はスクリーニングですから,見落としが存在する反面,過剰に疑うこともあります.ということは,疑って,何もなかったという場合も存在します.その場合には不必要な疑いによって不安を与えられたということで,保護者との信頼関係が損なわれる場合もあります.
最近ではマスメディアやインターネットの問題も欠かせません.たとえば自閉症についての番組があれば,子どもが自閉症かもしれないという相談の電話が来ることがあります.さらにインターネットで調べてみて,障害に対する治療法まで見つけていることもあります.そこには真偽とりまぜた情報があふれています.このように考えてみると,疾患や障害を疑った場合に適切に対応することは,決して容易ではないことがわかります.
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