連載 人を癒す自然との絆・14
極限の恐怖を味わった人々への癒しの試み
大塚 敦子
pp.780-781
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101901
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ガーデニングの国イギリスには,庭仕事のなかにメタファーを見いだし,心の癒しに応用する試みが数多くある.その1つは,拷問や迫害を受け,イギリスに難民として逃れてきた人びとを支援するナチュラル・グロース・プロジェクト(Natural Growth Project)である.メディカル・ファウンデーション(Medical Foundation for the Care of Victims of Torture)という慈善団体が1992年に始めた.100近くにわたるクライアントの国籍のうち,特に多いのは,コンゴやソマリア,イランやイラクなど.自分の国を命からがら脱出し,言葉も通じない外国にたどり着いた人びとだ.家族を殺されたり,離ればなれになってしまった人も多い.そんな人びとがほんのひとときでも安らぎを感じられる場所はどこか.その答えが,庭だった.
ナチュラル・グロース・プロジェクトを運営するのは,セラピストと庭師である.セラピストの役割は,自然とのふれあいのなかから浮かび上がってくるクライアントの心の奥底にあるものをキャッチし,自然をメタファーとして使いながら,癒しの方向へと導くこと.
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