特集 現場が求める保健師教育
保健師教育の現状と課題:保健師学生,保健師を受け入れている立場から
森岡 幸子
1,2
1前大阪府健康医療部地域保健感染症課
2現大阪府国民健康保険団体連合会保健事業課保健事業
pp.576-579
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101843
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はじめに
医師の養成のためには,患者と研修病院が必要である.同様に,保健師の養成には,地域の人々と活動事例,そして地域実習が行える保健所・保健センターの実習施設の確保が必要である.実習の場だけでなく,そこでの一定期間の実習が必須となる.しかし,近年,養成者数は需要をはるかに超えており,深刻な実習施設の不足を引き起こしている.その上,地域看護実習の単位が他の科目で読み替えられるなど,保健師養成の質保証に負の影響を及ぼしている.
保健師の専門性は,保健師助産師看護師法には「保健師の名称を用いて保健指導に従事することを業とする」と明記され,法律制度に依拠するのではなく,対象者または対象地域の様々な健康課題を中心とした相談・支援を含めた地域活動によって生ずる.したがって,実践者として地域活動ができる保健師の養成が求められている.保健師教育においては,保健師による地域活動のイメージが持て,地域活動の責任性の理解と態度の形成ができるよう,教育カリキュラムや実習体験が保証されなければならない.
専門職業人教育に対して各種の職業高校や専門学校が社会的需要を満たしていた時代から,一律大学において職業人養成がなされるようになった.看護師・保健師の養成が大学教育で行われるようになったことは,良い面もある半面,マイナス面もあることは否めない.近年,マイナス面が現場の活動に与える影響を看過できなくなってきた.今こそ危機感を持って,保健師教育のあり方や現任教育を再考していく必要がある.
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