特集 環境リスク
内分泌かく乱化学物質に関するリスク評価と研究成果の最新の動向―ビスフェノールAを中心に
遠山 千春
1
1東京大学医学系研究科疾病生命工学センター健康環境工学部門
pp.275-278
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101770
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はじめに
内分泌かく乱化学物質(以下,「環境ホルモン」)問題が社会問題化するきっかけとなった書籍は,Theo Colborn氏らによる『Our Stolen Future』(1996),邦訳『奪われし未来』(1997)であった.「環境ホルモン」については,ヒトや野生生物の健康に悪影響があるのかどうか,そのメカニズムは性ホルモン受容体を介したものであるのかどうかなど不明な点が多かった.1998年に環境省がSPEED 98事業で,内分泌かく乱作用があると疑われる化学物質として検討対象にした物質は67物質であった.このうち「環境ホルモン」としてもっとも注目を浴びてきた物質は,ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の原材料であるビスフェノールAである.
他方,ほぼ同時期に,これとは独立してダイオキシン問題も社会問題化した.多くの焼却場から当時の基準をはるかに超えるダイオキシンが環境中に放出されていること,これにより健康被害がただちに生じるとの懸念が広がっていた.ダイオキシンとその関連化合物は,ダイオキシン類特別措置法(1999年施行)で,別途,行政的な対応がなされることになった.
本稿では,紙幅の関係から,「環境ホルモン」の代表例としてビスフェノールAを取り上げる.
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