連載 働く人と健康・13―フランス在住ジャーナリストの立場から①
プシコソシオ問題(職場のメンタルヘルス)で闘いを開始したフランス―過労自殺の歴史とテクノサントル・ルノーの悲劇
山本 三春
pp.54-58
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101717
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はじめに
フランスで労働関連自殺(過労自殺)が急増し,衝撃が広がっている.
なかでも,2008年2月以来自殺が相次いでいた電話通信のフランス・テレコム(France Télécom)は,2009年10月15日,ついに20か月で25人目の犠牲者を出すに至った.1か月前から療養中だった48歳の男性が,3人の子を残して自宅で首を吊るという,痛ましい事件だった.
このため犠牲者が出たフランス西部の町では,本稿を執筆している最中の10月16日現在,深い怒りをこめた“沈黙の行進”が行われている.
また全国でも,労働組合,労働医(フランスでは産業医とは呼ばない)らが,数か月前から激しい抗議行動と団体交渉に乗り出し,わずかだが一定の前進も勝ち取った1~8).同時に精神医学者,法律家,社会学者,心理学者ら専門分野の研究者も,総力を挙げて一気に動き出し,災禍のストップに向けて,抜本理念および実践理念の確立に着手している.
本稿ではこうした動向を,完全網羅はできないものの,いくつかの象徴例を挙げて,実態と対応の両面にわたって紹介・報告したい.
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