特集 感染症再見
死亡者数最大の感染症:肺炎
①肺炎死亡の現状と動向
大日 康史
1
,
菅原 民枝
1
1国立感染症研究所感染症情報センター
pp.6-11
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101704
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1899年からの人口動態統計(図1)による肺炎の死亡率を見てみると,1918年から3年間のところでの急増を除いて,結核に次いで高い水準であったが,1947年には前年度に比して半数になり,その後1972年まで低下していった.しかしながら,翌1973年より増加に転じており,2008年は91.6(対人口10万人)であった.死亡順位では1951年から脳血管疾患が,1981年から現在まで悪性新生物が1位となっているものの,1976年より肺炎は順位を上げ,現在まで4位となっているが,近い将来には3位に浮上する勢いである.なお,1918年からの急増の理由は,2009年の新型インフルエンザ発生に伴い,お気づきの方も多いと思われるが,いわゆる「スペインかぜ」である.性別では,男性にやや高い傾向がある(男:女=99.9:83.7,対人口10万人).年齢群別では70歳以上の高齢者が99.5%以上である.
平成20年度の統計では誤嚥性や,化学物質等を起因とするものを除くと130,234名の死亡の内,病原体が臨床的あるいは検査室診断されているのは3,572名に過ぎない.病原体別では結核が1,806名と約半分を占め,ブドウ球菌(1,078名),肺炎球菌(180名),インフルエンザ(159名),緑膿菌(125名)と続く.この内ウイルス性は203名で95%が細菌性である.ウイルス性肺炎の3/4はインフルエンザであるが,分離されているのはその2/3である.
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