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はじめに—人口構造と死因構造の変化
総務省「人口推計」(2014年10月1日現在)によると,わが国の総人口は1億2,708万人(男6,180万人,女6,528万人)となっており,2011年から4年連続で減少するとともに,人口構造ならびに人口の地理的分布も変化してきている.
65歳以上の高齢者人口は,2012年に3,000万人を超え,2014年には過去最高の3,300万人となり,総人口に占める割合(高齢化率)も26.0%となっている.その内訳をみると,前期高齢者(65-74歳)人口は1,708万人,後期高齢者人口(75歳以上人口)は1,592万人となり,高齢者数が増加するとともに高齢化率も上昇し,わが国の総人口減少・長寿高齢社会が進行していることがわかる.また,都道府県別の人口増減率をみると,前年に比べ増加している都県は東京都,沖縄県,埼玉県を含め7都県であった.一方,40道府県の人口が減少しており,その中で秋田県,青森県,次いで高知県の減少率が大きくなっていた.
このような社会において,わが国の死因構造も大きく変わってきている.1985年以降2013年までの主要死因は悪性新生物,心疾患,脳血管疾患および肺炎である.2013年の人口動態統計の死因簡単分類をみると,循環器疾患である心疾患と脳血管疾患の死因順位は第2位と第4位を占め,全死亡数(126万8,436人)に対する心疾患による死亡数(19万6,723人)割合は15.5%,脳血管疾患による死亡数(11万8,347人)割合は9.3%であった.両疾患をあわせると24.8%(31万5,070人)となり全死因の4分の1を占めている.加えて,心疾患は,健康日本21(第2次)においても生活習慣病といわれる心疾患死亡の約4割を占める虚血性心疾患と脳血管疾患の年齢調整死亡率(人口10万対)の減少が目標値に設定されているように,健康寿命の延伸と都道府県格差の縮小を実現するためにその予防対策,治療およびQOLの向上が重要な疾患と言える.
心疾患は1985年以降第2位の死因となり増加の一途をたどっていたが,1995年に心疾患と脳血管疾患の死亡数・死亡率に大きな変化がみられた.それは,ICD10(国際疾病分類第10回改正)の適用と,「心疾患」は1995年1月施行の新しい死亡診断書において,「死亡の原因欄には,疾患の終末期の状態としての心不全,呼吸不全等は書かないでください」という注意書きの事前周知の影響により1994年と1995年に低下したが,それ以降は上昇傾向が続いている.
そこで,本稿では,1985年以降2013年までの当該年の人口動態統計,10月1日現在推計人口および国勢調査結果を用い,心疾患全体と虚血性心疾患の死亡数・死亡率の年次推移をはじめ,性・都道府県別年齢調整心疾患死亡率の推移,そして,虚血性心疾患の発症率もみながら,わが国の心疾患の死亡数・死亡率の現状と動向について記述する.
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