特集 妊産婦死亡の現状と削減に向けた対策
総論
わが国の妊産婦死亡の現状
長谷川 潤一
1
HASEGAWA Junich
1
1聖マリアンナ医科大学産婦人科学
pp.277-282
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000801
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はじめに
わが国の妊産婦死亡は,20世紀半ば以降の高度経済成長期の自宅分娩から,助産所や診療所での分娩へのシフトによって著明に減少し,1990年以降は先進国に並ぶ少なさになった。しかし,それ以降その減少率はほぼ横ばいとなっている。そこには,わが国の産科医療体制の特徴が関連している。多くの先進国では,分娩管理はセンター病院などで行われているが,わが国の分娩の半数は,病院に比べて医療資源の少ない有床診療所で取り扱われている。その頻度は,現在でもほとんどかわらない。そのようなわが国の,産科医療提供体制のなかでの妊産婦死亡率の減少のためには,独特なアプローチが必要であるといえる。医学的な進歩だけでなく,医療システム,医療安全の観点からの改善アプローチが行われている。本稿では,わが国の妊産婦死亡の現状を論じ,目指すべき方向性を示す。
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