連載 働く人と健康・9―産業医学センター所長の立場から②
夜勤と健康
広瀬 俊雄
1
1(財)宮城厚生協会仙台錦町診療所・産業医学センター
pp.685-689
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101635
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はじめに
朝日新聞朝刊(2004年6月12日)声の欄に「24時間の店で深夜働く主婦」という37歳のパートの方からの投書が掲載された.24時間営業に変わった際の深夜勤務者募集への応募者のほとんどが乳児・幼児,小学生のいる主婦だったとし,徹夜勤務が週3日で,年金保険料,介護保険料合計とほぼ同額を得ると書いている.最後に「深夜,母親の居ない家で寝ている子ども…それが現実です」で終わっている.なぜここまで「無理をして」夜勤に従事するのであろうか?
その背景には「国際化・24時間社会」のような社会的要因や,女性・若年世代を中心に日勤の正規職員の求人が極めて制限されていること,「高時給」を必要とする家計上の事情等もあろう.しかし重要なこととして,「夜勤による健康障害」の事実が夜勤労働者に十分明らかにされないままにきたことがある.その理由としては,例えば高血圧が健診等で明らかにされれば,法律によって健康を害した労働者自身は仕方なしに夜勤から離れなくてはならない.夜勤を続けられる労働者にはいわゆる「healthy effects」(見かけ上の健康の「正常化」)があること,また夜勤群と日勤群の単純比較調査では健康影響がきちんと現れないことが相当あったと指摘されている.その辺りについても十分認識しておかないと,判断に大きな誤りを生んでしまいかねない.
本稿ではわれわれが見出した「夜勤の健康影響」,「内外の知見」「夜勤継続のための自己犠牲・生活犠牲の実態」について紹介する.
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