特集 日本の食を守れるか?
中国産冷凍餃子事件における行政の対応を検証する
③国の対応
道野 英司
1
1厚生労働省食品安全部輸入食品安全対策室
pp.856-860
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101433
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昨年12月から本年1月にかけて,有機リン中毒が千葉県千葉市,兵庫県高砂市,千葉県市川市の3家族で発生した.3家族はいずれも中国の同一製造者が製造し,同一輸入者が輸入した冷凍餃子を食べていた.合計10名が嘔吐,めまいなどの症状を呈したが,千葉県市川市の事案では,小児1名が一時意識不明となった.調査の結果,患者が喫食した冷凍餃子の吐瀉物などから,有機リン系農薬であるメタミドホスが高濃度検出され,これらの事案はメタミドホスが混入した冷凍餃子による食中毒事案とされた.
日常的に広く流通する食品を原因とした本事案の発生により,食品の安全に対する国民の信頼は損なわれた.このため,政府として,国民の健康の保護を第一として,食品の一層の安全性確保を図ることが,最優先課題のひとつとなった.本事案の原因は日中の当局が捜査中であるが,政府一体となって取り組み,危害情報の集約・一元化体制の強化,緊急時の速報体制の強化など,原因究明を待たずとも取り組むべき課題に対しては,速やかに対応する必要があることから,平成20年2月22日,食品による薬物中毒事案に関する関係閣僚会合による申し合わせ「食品による薬物中毒事案の再発防止策について(原因究明を待たずとも実施すべき再発防止策)」が取りまとめられた.厚生労働省では,申し合わせに従って,関係法令の改正,ガイドラインの策定など順次対応してきており,本稿では,本事案の検証および提起された問題への厚生労働省の対応について述べることとする.
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