連載 予防活動のガイドライン・10
肺がん
矢野 栄二
1
1帝京大学医学部衛生学公衆衛生学
pp.813-817
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101424
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米国癌学会はそれまでの喫煙者などのハイリスクグループにおける胸部X線検査による肺がん検診の勧奨を1980年に変更し,以降今日までいかなる方法による肺がん検診も勧奨していない1).1989年に発表された米国予防医療研究班(USPSTF)の勧告2)においては肺がん検診を勧告レベルDとして,むしろ検診を行わないことを勧告しており,それは1996年に発表された第2版3)にも引き継がれた.しかし,胸部X線検査と細胞診による肺がん検診の有効性について,日本のいくつかのグループが精力的な研究を行い4),その結果も考慮した結果,USPSTFは勧告レベルを2004年に変更している.
一般に日本で広く行われている健康診断項目には,その実施根拠となる有効性・有用性を示す研究に基づかず,十分な議論もないままに法律で実施が義務付けられているものがある5).それはこれまで健診検査項目の有用性のエビデンスについて,わが国ではあまりかみ合った議論がなされてこなかったことを反映している.しかしその中で肺がんは,日本の研究者の研究が世界での議論に影響を与えた,例外的な疾患である.
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