特集 たばこ研究
たばこ対策研究の現状と今後の研究課題
尾﨑 米厚
1
1鳥取大学医学部社会医学講座環境予防医学分野
pp.522-526
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101354
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たばこ対策に関する研究は,近年急速に発展しつつある.Medlineで検索した場合でも,喫煙関連キーワードを持つ論文は171,249にも上り,肺がん(132,375),脳卒中(120,640)などよりも多い(2008年4月7日).ヒトを対象とした様々な疾病の研究をする場合に,既知の危険因子として喫煙状況は必ず調べなくてはならず,そのため喫煙がキーワードとなっている物も多いが,最近では喫煙対策そのものが研究対象となっており,研究デザイン,研究方法も急速に進化しており,論文の質も高度になってきている.
したがって,たばこ対策関連の論文を国際誌に掲載しようとすると多大な努力が必要であり,その上喫煙対策の遅れにより,日本からの国際的研究が極めて少ない分野でもある.喫煙対策の根拠には,喫煙の健康影響の評価が必須である.喫煙対策の3本柱に喫煙防止,受動喫煙防止,禁煙治療があり,総合的な評価のために喫煙状況モニタリングがある.
また,社会問題との接点として訴訟問題,たばこ会社の内幕なども研究対象となってきている.日本公衆衛生学会による「21世紀の公衆衛生研究戦略を考える」というフォーラムの報告書における,今後必要となってくる分野別の研究についての記載においても,酒・たばこ・依存性薬物だけが分野名ではなく,具体的に名前が挙げられているほど重視されている1).今後,ますますわが国発のエビデンスの公表が望まれる.
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